本当に良い音質で音楽を聴くためにまず知るべきは「DAC(デジタルアナログコンバーター)」。前回の記事でDACとは何かについて紹介しました。
DACを理解すれば、Youtubeやアマゾンミュージックなどのストリーミングにも、今も手元にあるCDにも、またヘッドホンとスピーカーを自在を使い分けられます。
メリットはそれだけではありません。DACを中心にオーディオの全体像を理解すると、世界観の天地逆転、いわゆる「コペルニクス的転回」が起こります。
そして、より安くオーディオシステムを発展させることができるでしょう(ここ重要)。
CDプレーヤーというDAC
「オーディオ入門」と検索すると、ほぼ確実で出くわす「CDプレーヤー」なる存在。「今さらCDかよ」と思う人も多いでしょう。
実は、ほとんどのCDプレーヤーには背面にUSB入力端子があり、USB-DACとしても使えます。つまり、CDプレーヤー兼USB-DACと、マルチで使えるのです。
しかも、「SACDプレーヤー」と呼ばれるものを含めた高級CDプレーヤーに搭載されているDAC回路には、高級パーツがふんだんに使われています。
そこで、主にUSB-DACとして使いつつ、時にはCDで聴くというとても便利な使い方があります。世の中、まだまだストリーミング配信に非対応で、CDでのみで聴ける曲も、世の中には少なからずありますので。
しかも、プレミアム☆なCDプレーヤーで聴くCDの音は「安定して素晴らしい」です。その理由は、通信環境やデジタル機器から発するノイズの影響に左右されることがないからです。このテーマについては、別記事で述べたいと思います。
また、「ネットワークプレーヤー」という、CDドライブを省いたプレーヤーも増えています。LANケーブルでルーターやONUと接続し、もれなくノイズがプレゼントとされるパソコンからのUSB接続を介さず、音楽再生ができます。
読んでいる方の中には、「そんなことくらい知っている。こんなの当たり前だ!」と思う方もいるでしょう。でも、「そんな当たり前」が一般にはほとんど知られていないのが現状です🥺
機器ではなく機能で考える
面白いのは、ここから!上記のように考えると、オーディオ機器に対する見方が変わってくるでしょう。
例えば、CDプレーヤーという一つの機器の中に、CDからデータを読み取る「ドライブ」と、デジタルデータをアナログデータに変換する「D/A変換(DAC)」という、2つの機能を持つ機器であることが明確になります。
ここまでくると、CDプレーヤーのような「機器」としてはなく、「機能」として分解してみることができます。
もちろん、この考えはCDプレーヤーに限らりません。あらゆる機器に適応することで、オーディオシステム全体像の解像度がさらに高い次元で見えてきます。
例えば、USB-DACをそのまま使い、さらなる高みを目指す人なら、ネットワークトランスポーターやミュージックサーバー(オーディオ向け高級NAS)、CDトランスポーターなどを追加します。
ネットワークトランスポーターは、先ほど紹介したネットワークプレーヤーからDAC機能を省いたもの。私自身もネットワークスタンスポーターを通じてUSB-DACと接続しています。
20万円以上の製品がメーンストリーム(高い!)のミュージックサーバーは音質データを保存するもの。厳密にはNAS(家庭用サーバー)であり、分かりやすく言うと外付けHDDまたはSSDのオーディオ版。パソコン内部の楽曲データから聞くのに対し、大幅な音質アップが期待できます。こちらもDACに接続します。
最後にCDトランスポーターは、CDからデジタルデータを読み取りるだけの機器。CDプレーヤーからDACを除いた機器です。すでにUSB-DACを持っている人が、「CDでも音楽を聴きたい」と思った際に、追加で導入するものです。
このように、DACをオーディオシステムの中心(関所)に置くと、ストリーミング、保存データ、CDなど多岐に渡る上流側の音源を使い分けることができます。
予算や所得に応じて、少しずつ機器を買い足すことで柔軟に拡張していけるのです。
☆写真兼図版 CDプレーヤー=CDドライブ+DAC=CDトランスポーター+USB-DAC
ネットワークプレーヤー=ネットワークトランスポーター+USB-DAC
パソコンにリッピングした音源データorストリーミング+パソコン内DAC→ミュージックサーバー+ネットワークトランスポーター+USB-DAC
DAC-4.4mmケーブルorXLRケーブル-ヘッドホンアンプ DAC-RCAケーブルorXLRケーブル-プリメインアンプ(スピーカー向け)
ヘッドホン用DACのコスパを応用する
最後に、とても重要な点を繰り返します。それが「コスパ」についてです。
先ほど言及したとおり、USB-DACは主にヘッドホンのカテゴリーに位置づけられており、多くの場合、商品説明を読んでもヘッドホンで使うことだけが書かれています。
しかし、D/A変換後のアナログデータは共通言語です。スピーカー用アンプとつなぎさえすれば、USB-DACを介してスピーカーは朗々と鳴ります。
私のようにヘッドホンとスピーカーを併用する人にとって、機材の追加投資(二重投資)を回避できるのはもちろん、ヘッドホンやイヤホン向けの機器は「コスパ」に優れた製品が充実しているからです。
特に近年、スピーカーやCDプレーヤーといった従来型のオーディオ世界では、強烈なインフレ(価格高騰)に見舞われています。
アメリカと日本で物価水準が異なるように、スピーカーやCDプレーヤーの世界と、ヘッドホンおよびそれ向けのUSB-DACの世界では、物価水準が異なるのです。
「一物一価の法則」と呼ばれる経済原則が全く働いていません。これは、適切なオーディオ入門・解説が不足していることから、これらの両世界で分断が起き、「情報の非対称性」によってもたらされていると思っています。経済に詳しい人、ぜひ分析してみてください(笑)
相対的にインフレ率が低いヘッドホン系の世界に住んでいるUSB-DACを導入し、それをスピーカーの世界にも「移住」させることで、それこそ投じるお金が「桁(けた)」次元で抑えられます。
DACにも「数百万円」クラスがあります。でも、初めて使う人であれば、5万円かそれ以下のUSB-DACでも充分に違いに感動できます。
一つの機器に数十万円を投じるのは、まずはその感動を知ってからでも遅くはありません。
前回の記事含めて、DACについてのまとめです↓
①DACは、パソコン・スマホで音楽を聴いていた人にとって、音質向上に向けた重要なステップ
②DACは、オーディオシステム全体の関所(要衝)であり、柔軟にシステムの拡張を検討する際に重要なポジションを示す。
③ヘッドホン向けのUSB-DACをスピーカーシステムに転用すると初期費用を抑えられる
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